スターバックス ハワード・シュルツの経営姿勢に学ぶ

2000年に経営の第一線から身を引いたスターバックスの創業者ハワード・シュルツが、会長職からCEOに復帰したのは、今から10年前の2008年のことです。迷走気味の経営を革新するために自ら改革に着手することにしたのです。

シュルツは、スターバックスを人々の最終目的地となる居心地のよい場所にするという明確なビジョンを持っていました。シュルツは、こうした居心地のよい空間を、自宅(第1の空間)、職場(第2の空間)と並ぶ、第3の空間(サードプレイス)と呼んでいます。その空間を創り出すためには、コーヒーの香りが不可欠であり、店内は禁煙とし、店員も香水をつけないように指導が行われてきました。

しかし、当時のスターバックスは、大規模化、合理化の中で、たばここそ吸えなかったものの、自動エスプレッソマシンを導入し、バリスタの対応が見えなくなったり、焙煎したコーヒーを袋詰めして香りを犠牲にしたことがありました。さらに問題だったのは、サンドイッチを温める際のチーズの焦げた匂い。シュルツが提供したい店の価値を台無しにするものだったのですが、売れ筋だっただけに社内の対立を生みました。10年前、この問題を解決するためにシュルツは会長からCEOに復帰したのです。

スターバックスの再生を成功させたシュルツの次の敵はデジタル化でした。デジタル化が進む中で消費者の行動が変化し、スターバックスから足が遠のくことを恐れていました。そのため、店内に焙煎所を備えた大型店「リザーブ・ロースタリー」を開き、顧客の好みにあわせたカスタム・コーヒー、食事を出すという顧客の「体験」を重視する店舗を提供したのです。これは、飲食店の中に従来以上のリアルな製造機能を取り込むことで、体験によって差別化を図る戦略ということができます。 革新的な取組が一定の成果をあげたと判断したのでしょう。昨年4月にシュルツは「デジタル化する中でも、スターバックスが人々が集まる最終目的地として顧客に「体験」を提供し、時代の先を進むことができた。」と述べて、CEOをケビン・ジョンソンにバトンタッチし、再び会長職に退きました。

状況が変化しても、一貫してビジョンを追求するシュルツの姿勢に、提供する「価値(value)」と、それにこだわる経営者の信念の大切さを強く感じます。シュルツを手本に、自分自身でも取組む事業の「価値(value)」を見定め、その提供に向けて常に問い返す姿勢を持てるようになりたいと思います。

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