創客創人-日南市の挑戦-

昨年、訪問した地域の中で特に印象に残っているは日南市です。商店街の再生や地方創生の取組で有名ですが、実際に訪問してその理由がよくわかりました。まちづくりのコンセプトが明確なのです。たまたま崎田市長にお会いしてお話が伺えたのですが、最も力を入れているのは、雇用の創出だそうです。街を維持するためには人口を維持しなければならず、そのためには雇用が必要という明快なロジックです。特に、若いファミリー層の定住に力を入れていることが分かりました。 そのことを端的に示すのが、若いママが働いているIT企業のオフィスや、「ことこと」という子供のための施設や託児所です。

まず注目したいのは、まちなかにIT企業や広告企業を誘致していることです。油津商店街の一画には、IT企業「ポート株式会社」が、また周辺にマーケティング支援会社「Omnibus」等が立地しています。いずれも東京に本社がある企業です。これらのオフィスで、地元の若いママさん達が一生懸命働いているのが印象的でした。ITを活用すれば、業務によっては距離の問題はないのです。むしろ最近の人材難の中、企業にとって、地方で、若く優秀な人材を確保できることが貴重なのだそうです。地方創生に向けて、こうした形で移出企業を立地さることは、とても重要だと思います。

もうひとつ注目したいのは、こうした女性の就業を支援するための基盤となっている、日南市子育て支援センター「ことこと」です。この施設は、若い世帯の定住を促進するための基盤となる子育て支援の拠点的施設です。施設の中には、地元の特産である飫肥杉を活かしたおもちゃや、飫肥杉のボールが満たされた空間等が整備されています。ふくよかな飫肥杉の香りと触感に触れることができる豊かな空間ということができます。また、ことこと以外にも保育園なども立地しており、若いお母さんでも子供預けて就業することが可能な環境が整備されています。

大都市圏に位置する神戸や、横浜など、遠距離通勤が必要な大都市地域では、全国的にみて女性の就業率が低いことが報告されています。そのひとつの理由が遠距離通勤だといわれています。日南市の場合、中心市街地にオフィスと子育て支援施設を設けることによって、こうした課題に対応することに成功したといえると思います。

市では、「人づくりこそがまちづくり」であるとの考えに立ったまちづくりのコンセプトを「創客創人」と名付けています。若い人を惹きつけ、若い人に活躍してもらう仕組みづくりに注力する取組は、注目に値すると思います。

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