アンコールクッキーから農業開発へーマダムサチコの挑戦ー

カンボジアのシェムリアプに行ってきました。前回の訪問は2005年のことなので、13年ぶりの訪問です。今回、訪問してカンボジアも自立に向けて動き出しているという実感を持ちました。前回は持続可能な観光開発の仕事で訪問したのですが、土産品もほとんどなく、旅行収入の約4割が国外に流出しているという政府の報告書を驚きをもって読んだことを思い出します。

そんな前回のシェムリアプ訪問時に、日本人が産業興しに取り組んでいると教えてもらったのが、マダムサチコ(小島 幸子氏)の「アンコールクッキー」。まだ、2004年の開業から間もない頃でした。地場産の土産もあまりない状況の中で、日本人がよくやっているなと驚き、頑張って欲しいと思ったことを思い出します。その後、アンコールクッキーを3億円の事業に育て、地域の産業振興に貢献したのはよく知られている話です。

アンコールクッキーの創業の理念は次の3つ。

  • カンボジア人の手によって本当のカンボジア製品を作り出し、カンボジアを訪れる観光客に品質のいいカンボジア土産を提供すること
  • 援助という一方的に与える関係ではなく、若い人たちが自分の足で自立して生きていくためにカンボジアの人に働く場所を提供していくこと
  • カンボジアの若い力がこれからの国づくり、カンボジアの未来へ貢献していけるようにするため、スタッフひとりひとりが夢と希望を持てる職場 環境を作り、カンボジアの若い人たちの可能性を広げていくこと

特に、最初の、カンボジア人の手によって本当のカンボジア製品を作り出し、カンボジアを訪れる観光客に品質のいいカンボジア土産を提供することというポイントに、地場の産業振興と考えて取り組んだ事業であることを感じました。外貨を稼ぐ産業振興という意味で、まさにカンボジアにおける地域おこしの成功事例であり、今の地方創生の取組に通じるところがあると思います。

ただ、小島氏は2016年6月にアンコールクッキーに新しい経営陣を迎えたのち、2017年4月には顧問も辞めています。今はシェムリアップ市内から北西に車で約40分のところにあるアンコールトム郡スヴァイチェイク村で道路を整備し、土地を開墾し、スヴァイチェイクファームを開園。オーガニックな食材の生産と加工に取り組んでいるそうです。10年間で劇的に発展した都市部の陰で取り残されている農村地域の振興に向けて、カンボジアの主要産業であるはずの農業を産業にしたい、という思いからの取り組んだとのことです。

今は、果物の生産基盤の形成に注力しマンゴー、バナナ、パイナップルなどの生産に取組、一定の成果は上がっているようです。次のステージはこの野菜や果物を使い加工品を製造すること。「1次産業だけではベトナムや中国などから入ってくる安い野菜に太刀打ちできません。加工し付加価値をつけ、年間を通して販売していける体制を作ることが農業で生きていける道なのだと考えています」。さらに、「2次産業の製造加工が実現した次のステージはファームにお客様に来てもらうことです。ファームが観光農園となり、この村に人が集まることにより、村全体の活性化、雇用の拡大が実現し、農業の6次化につながっていき、農業からの産業が実現すると信じています」と、大きなシナリオを描いていることに感銘しました。

どうもアンコールクッキーは、事業としては成功したものの、彼女自身の新しい経営ビジョンを描けず、ここ数年悩みがあったようです。転身のはっきりとした理由はわかりませんが、カンボジアの地域振興に身を捧げたいという思いがあったのではないでしょうか。安定した状況を捨て、貧困に苦しむカンボジアの農村に入りこみ、ビジョンを持って産業おこしに取組む姿勢に、初志を貫徹する強い意志を感じました。異国の地ながら、新しい自立した地域づくりの取組にエールを送りたいと思います。

参考:https://www.svaychekorganicfarm.com/about-us

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