EBPMにみるインフォメーションとインテリジェンス

証拠に基づく政策立案(Evidence Based Policy Making:EBPM)への関心が高まっています。政策形成に当たって証拠(evidence)が重要だという議論は、2011年の「科学技術基本計画について」にも示されており、以前から議論されてきました。ここに来て、統計改革の動きと相まって、限られた予算・資源のもと、各種の統計を正確に分析して効果的な政策を選択していくことの重要性が改めて認識されるようになりました。

2017年5月に出された統計改革推進会議の最終報告では、EBPMを推進する体制を政府内に構築し、政府部局による統計データの活用と、統計部局によるニーズを踏まえた統計データの改善が連動する「EBPMサイクル」を確立することが結論付けられています。2017年の「骨太の方針」にも掲載されており、各省から今年度はいろいろな取組が検討されようとしています。 政府の資料によれば、EBPMの取組例としては、2001年9月にBSE感染牛が発生した際に、出荷前の国産牛について全頭検査を実施したことや、 過大な需要予測(将来人口)を基にしていた公共事業が実態に即したものに改められた例が紹介されています。(行政改革し推進本部第9回資料集)

また、関連して、興味深いと思ったのはニューヨーク市におけるデータインテリジェンス・イノベーションセンター(Center for Innovation through Data Intelligence)の取組です。市の健康福祉部局に設置された組織ですが、データ利用に関するセミナーを開催したり、各種の調査結果に基づく政策形成を推進しています。具体的には、人種による経済状態や、健康状態を分析し、移民の健康サービスに対するアクセス改善や、低所得者に対する住宅の改善等が検討されています。 日本の取組を進める上でも参考になると思ったのは、データについて、「インフォメーション(information)」ではなく「インテリジェンス(intelligence)」という用語を用いていること。前者は体系だって整理された情報を示すのに対して、後者は意思決定に資する示唆を提供する意味ある情報のことを意味しています。企業などの組織のデータを、収集・蓄積・分析・報告することで、経営上などの意思決定に役立てる手法や技術が「ビジネスインテリジェンス(Business Intelligence)」と呼ばれているのがよい例です。日本の行政ではこうした用語を用いているのを聞いたことがなかったので、新鮮な気づきがありました。

RESASやe-stat等、政府は統計基盤の整備に注力していますが、まだまだインフォメーションの整備に注力している段階なのではないか、EBPMを推進するためには、インフォメーションをインテリジェンスの昇華させる必要があるのではないか、そのためにはどういうことをすればよいのか、暫く考え続けたいと思います。

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