都市の土地利用計画について

新興国の土地利用計画のための人材育成を考える機会があり、教材を作成するために、久しぶりに土地利用計画に関する文献にあたってみました。ですが、思ったようなコンテンツが記載されている文献がないことに気づきました。例えば、都市計画の教科書や、都市計画マニュアル等に当たったのですが、最近の教科書やマニュアルは制度の解説がほとんどで、土地の需給をマッチングさせるとともに最適な配置を実現するという、土地利用計画の基本的な考え方は紹介されていないのです。

研修で紹介したいと思っているコンテンツを探していて、結局、1966年に刊行された古典、チェピンの「都市の土地利用計画」に行き着いてしまいました。この本では、経済的な視点から土地需要の考え方や、土地利用配置の便益評価の方法が紹介されています。こうした手法は、どうしても経済的な面からの評価が中心となり、景観などの質的な環境評価までは扱いにくい感はありますが、土地利用を考える上では基本的な事項だと思うのです。

しかし、当たった範囲の教科書や都市計画マニュアルについては、用地需要に関する記述は言及されている場合はあるものの、開発可能地の考え方や土地利用配置の考え方にまで言及している書籍は見当たりませんでした。だから、都市計画法が提供している線引き、用途地域等の規制制度や、市街地再開発事業等の事業制度は、あくまで目標を実現するための手段であるにも関わらず、その前提となる考え方や手法があまり紹介されていないことが気になったということです。

その昔は、ニュータウン開発や都市のセンター地区開発の文献も多く、都市の土地利用計画でも開発需要を見通した市街化区域の拡大のあり方が大きな政策課題でした。私自身はこうした書籍や具体のプロジェクトから土地利用計画について学んだと思っています。たぶん、最近の実務家や学生はこうした教材に触れる機会は少なくなっているのではないでしょうか。

今日、我が国は人口減少社会に突入し、政策のキーワードに「都市のコンパクト化」「都市のスポンジ化」等があげられているようになりました。私が暮らしている住宅地でもそこかしこに高齢者が暮らしており、気づかないうちに空家・空地になっていることも少なくありません。既存の土地・建物の供給余力に対して需要が不足する地区が増えているのだと思います。 我が国のような縮小局面にある国では、土地の需給といっても新興国とは違い、縮小する需要と供給余力のマッチングが課題であり、過剰な供給余力の整理が基本的な問題だといえます。新興国の素材を現在の我が国の土地利用の状況に求めることが難しいことは当然なのだと思います。

それでも、土地の需給をマッチングさせるとともに最適な配置を実現するという考え方は、いずれの場合も基本だと思います。制度以前の原理を踏まえた都市のあり方と、その実現手法についてもう少し学習する機会と手段を充実すべきではないかと思いました。

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