新しい計画概念としての「関係人口」に思う

6月21日に閣議決定された「第2期まち・ひと・しごと創生総合戦略」では、第2期における新たな視点として「関係人口」が位置付けられ、関係者の注目を集めています。同戦略では、地域課題の解決や将来的な地方移住に向けたすそ野を拡大するため、定住にいたらないものの、特定の地域に継続的に多様な形で関わる「関係人口」の創出に取り組むと謳われています。ただこれだけ読むとどういう人たちなのか、判然としないように思いました。

そこで、もともとこの考え方を提起した、総務省「これからの移住・交流施策のあり方に関する検討会」の報告書を読んでみたところ、長期的な「定住人口」でも短期的な「交流人口」でもない、地域や地域の人々と多様に関わる者と定義されていました。具体的には「近居の者」「遠居の者」「何らかの関わりがある者」「風の人」が該当するようです。

読んでみて、関係人口が、地域を訪れるだけの交流人口と区別されていることが目を引きました。私の記憶によれば、交流人口を計画概念として位置付けるようになったのは、1987年(昭和62)の第四次全国総合開発計画(四全総)で1日交流圏人口という考え方が打ち出された時からだったように思います。全国各地に空港、新幹線、高速道路網などの高速交通機関を整備し、主要都市間の移動時間をおおむね3時間以内に抑え、地方から高速交通機関を利用するのにかかる時間(アクセス時間)をおおむね1時間以内に短縮することが目指されました。

四全総では交流圏の拡大が、地域活性化の条件であり、その実現のために交通インフラの整備が必要というロジックが、「1日交流圏人口」という概念を用いて打ち出されたといえます。その後、拠点集約に伴う出張型ビジネスの拡大や、観光による経済効果への期待の中で、交流人口という概念が定借していったわけです。地域経済の活性化という面だけから捉えると、これまでは、インバウンド観光客を含めて、地域で宿泊し、消費を通じて外貨の拡大をもたらす交流人口の拡大をめざせば何とかなるという認識だったように思います。

これに対して、今日、関係人口が重視されているのは、訪れる人の数や、消費の多寡の問題ではなく、地域の担い手としての役割のようです。最近、自治体半減を提起した「自治体戦略2040構想研究会」や、地方制度調査会でも議論されているように、人口減少、高齢化が進行する中で、共同体としての地域の再編は避けられない状況にあると思われます。「関係人口」がクローズアップされたことにも、地域の担い手不足がそこまで進行してきているのかという、切迫した状況を改めて感じてしまいます。

一方で、まちづくりの仕事をしていると、故郷に帰って新しい事業を始める若者や、定年を機に地方に住まうサラリーマンと出会うことも少なくありません。依然として、東京への集中傾向は進んでいますが、二地域居住、兼業兼居という動きも少しずつ拡大しているように感じます。

将来的な地域像をもっと明確にしていかなければいけないと思いますし、「関係人口」という打ち出しがどこまで定着するのか、どの程度の影響力を持ち得るのか、現時点ではよくわかりませんが、少なくともこうした地方回帰に向けた動きを促進させる具体策につながることに期待したいと思います。

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