テレワーク再考

新型コロナウィルスの感染が拡大する中、テレワークの利用が拡大を見せています。電通やパナソニック、資生堂、日清食品、NEC、NTT西日本、飲食品情報サイトの「ぐるなび」など、大手企業で本社社員などを中心にテレワークの開始を発表しています。国土交通省の2017年の調査によれば、全国のテレワークの導入状況は雇用型で14.8%、自営型で22.2%ですが、ここに来て、導入率が急速に高まっていると思われます。

一方で、「テレワークができるのは上級国民の大手企業正社員だけ」との批判もでています。確かに対面型のサービス業でテレワークといっても無理があります。また、専門職は対象となっていても、一般スタッフが対象から外されていたり、派遣が外されていたり、という批判も聞こえてきます。

とはいえ、テレワークの可能性はは新型コロナウィルス対策に留まらず、本来、就業場所や就業時間の自由度を高め、働き方改革や地方創生に対する効果が期待される取組だと思います。その意義を再確認する意味で、ここ数年で見聞した働き方改革や地方創生に向けて、テレワークをうまく使っていると感じた取組例を紹介したいと思います。

ひとつめの取組は日南市におけるIT関連企業誘致の取組。日南市は宮崎市から南に約30km、車で約1時間、JRでは1時間10分ほどの位置にあります。東京から至便とはいいがたい立地条件だと思います。しかし、崎田市長のイニシアチブのもと、2人の専門人材を登用するという地域の思い切った取組が功を奏し、ここに10社以上のIT企業や広告代理店のサテライトオフィスの立地が進んでいます。

最初に立地したIT企業は東京に本社を構える株式会社ポート。2016年4月に停滞状態にあった油津商店街にメディアの運営部門を担うオフィスを構えました。また、インターネット広告の配信事業を展開する株式会社Omnibusは運用型広告を担うオペレーションセンターを開設しました。日南での業務をお伺いしたところ、業務の受注や顧客との交渉は東京で行っているとのことですが、コンテンツの作成等については、日南でやっても問題はなく、むしろ人材を採用しやすいメリットがあったとのお話がありました。

こうした立地企業に就業しているのは主として日南市に居を構える若い主婦たちです。こうした主婦が働きやすい環境を整備するために、油津商店街には保育所や日南市子育て支援センター「ことこと」が整備されました。IT企業が立地し、新たな都市機能が立地する中で、新しいコミュニティ形成の場として商店街が変貌を遂げた事例となっていることにも注目したいと思います。

 

もうひとつ紹介したい事例は、長野県塩尻市の振興公社の取組です。振興公社が地域の雇用創出に向けて、企業や官公庁におけるアウトソーシング業務を振興公社が受注し、分解・マニュアル化した業務をワーカー(個人事業主)に発注するというユニークな取組を展開しています。

ターゲットは、地域において、就労に際し時間的な制約のある求職中の方(子育て中、介護中、障がい者、シニア等)。ワーカとしての登録は約520人、実働ワーカーは:260人を数えます。拠点施設として、塩尻市大門のウイングロードビル3階に、託児所付きのワークスペースが設置され、業務用PC120台、ワークステーション20台が配置されています。

また、現在、振興公社の発注先は市内に留まらなくなり、松本市をはじめとして、周辺の地方自治体や、北海道美唄市、糸魚川市等、地域連携を通じて市外在住のワーカーにも業務を発注するようになっているようです。東京や大阪に集中する業務需要を地方に配分する仕組みとして注目したいと思います。

 

ところで、本稿で焦点をあてて紹介したテレワークは、「サテライト」型ですが、これ以外に「在宅型」、「モバイル型」があり、テレワークは3タイプにわけられます。先の国土交通省調査によれば、このうち利用が多いのはサテライト型で56.6%(うちサテライト型のみ27.4%)、在宅型47.2%、モバイル型51.1%となっています(複数タイプを組み合わせて利用している場合も多数あります)。テレワークの意義を正確に理解し、活用を推進するためには、これらのタイプと得失を認識することも重要だと思います。現下の新型コロナウィルス対策としては、在宅型の普及が望まれるところですが、働き方改革や地方創生の面では、サテライト型がより重要だと思うのです。

また、プラットフォームビジネスの普及により、サテライト型を在宅型に変えることも、それほど難しくなくなってきていることにも注目したいと思います。例えば、ビジネスコミュニケーションツールとして広がりつつあるSLACKやTEAMS等のchatツールや、wheweby、skype等のWEB会議ツールには無料で利用できるものも提供されています。上手に活用すれば、中小企業やフリーランスでもバーチャルにかなりの共同作業を行うことが可能だと思います。

 

テレワークが我々の就業スタイルを変えていくのは間違いないと思います。テレワークに対応できる業種、業態は限られるかもしれませんが、こうした取組を少しずつ拡大することで働き方改革や地方創生が一歩ずつ進むことに改めて期待したいと思います。

 

参考:

国土交通省「平成29年度 テレワーク人口実態調査」(2018.3)

一般社団法人塩尻市振興公社「塩尻市におけるテレワークの推進について」(2019.5)

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