OKRの視点から-目標の先送りと実施の先送りについて-

最近、よく見るようになったマネジメント用語に、“OKR”という目標の設定・管理手法があります。これはObjectives and Key Results(目標と主要な結果)の略称。1970年代に米・インテル社で誕生し、GoogleやFacebookなど、シリコンバレーの有名企業が取り入れていることで注目を集めるようになりました。

解説書を斜め読みしたところ、以前から言われてきた目標管理MBO(Management By Objectives)と比べると、大胆なムーンショット(Moon Shot)と呼ばれる目標を設定し、短期的に運用されていることが多いようです。革新的な変革に向けて、内閣府から公募されている「ムーショット」と呼ばれる研究開発プログラムの名称はここから来たことも最近知りました。

ところで本題。OKRが着目する「目標」と「主要な結果」の視点について考えているうちに、わが国の政策目標の現場が「目標設定の先送り」と「実施の先送り」というふたつの大きな問題を抱えていることに気づきました。

 

「目標設定の先送り」を感じたのは、国際基準として広まっている衛生管理の仕組みHACCP(Hazard Analysis and Critical Control Point)の導入。HACCPの考え方は、もともとアポロ計画の際に、米国NASAが宇宙食の安全性を確保するために考案したものですが、その後様々な食品に適応され世界各国に広がっています。1993年に国際食糧農業機関と世界保健機関から派生する食品規格委員会によって、HACCPのガイドラインが示され、米国やEUが義務化する中で、今や食の安全性を維持する国際基準となっています。

ただ日本の採用は、米国EUはもとより、韓国や中国と比べても遅く、ようやく2018年6月の国会で今年6月から制度化を開始することが法改正で決定されました。2021年6月から義務化されるそうです。食品輸出の分野では以前からHACCP対応の必要性が議論されていたのですが、ずっと先送りされ続け、オリンピックへの対応があってやっと制度化の運びになったようです。

以前から我が国の対応が遅いとは思っていたのですが、アジア諸国にも大きく遅れている状況ということで唖然としてしまいました。

 

「実施の先送り」を感じたのは、政府のIT戦略。2000年代初頭には、世界最先端の電子政府を目指すことが目標として設定され、業務システム最適化に取り組まれてきました。ただ、今般のコロナ対応では、保健所からの感染経路の調査がFAXや電話の聞き取りで行われていることが理由で、患者数の集計に手間取っている状況が明らかになり、給付金のネット申請の障害頻発など、信じられないレベルの業務がまだまだ残されていることが明らかになりました。

たまたま参加した電子政府に関するセミナーで、日本に滞在したことのあるエストニアの職員から、在日中に生まれてからFAXを使ったことが無かったので戸惑った、という話があり、日本の対応の遅れを痛感した次第です。政府のIT戦略は多少お手伝いしたこともあり、この話を聞いていてちょっと恥ずかしくなってしまいました。

最近、関わっている流通の現場でも紙の伝票がまだまだたくさん残されています。大きな目標設定は早くからできていたのに、業務改善の必要性に対する感度の低さから、実施を先送りしていることがまだまだあるに違いありません。

 

人口減少、高齢化による問題に加え、日本の競争力の低下が指摘されることは少なくありません。端的に示すのがIMDの世界競争力ランキングの推移。1980年代にはずっと1位という時代もあったわけですが、2020年は前年度からランクを4つ下げ、過去最低の34位まで落ち込みました。インフラ面は高い評価を得ているようですがデジタル技術は62位。「ビジネスの効率性」について、起業環境や国際経験は最下位とのことです。

競争力低迷の陰に、「目標の先送り」と「実施の先送り」という2つの問題の存在を感じます。改めて“OKR”の視点から業務を見直し、目標とその着実な遂行が必要なことを痛感した次第。社会の仕組み変革もジブンゴトとして取り組まねばと思います。

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