デジタル庁への期待

社会保険関連の申請を行う必要があり、経済産業省が普及に注力しているgBizIDを利用してみました。gBizIDは、法人番号を活用し、ひとつのID/パスワードで複数の行政サービスにアクセスできる法人共通認証基盤。法人番号をマイナンバーのように用いたサービスといえます。

実際に利用してみると、わざわざ社会保険事務所に出向く必要もなく、社会保険手続きを短時間で処理できました。e-Govからの電子申請は依然うまくできなかったので、いつ社会保険事務所に行こうかと考えていました。居ながらにして事務処理ができたのはありがたいと思いました。

ただ、便利にできて良かったと思いつつ、政府の申請処理等、今後デジタル庁のもとでもっと一元的に処理すべきだということも強く感じました。というのも改めて、行政の縦割りを感じてしまったからです。

gBizIDは、今回利用した厚生労働省に限らず、農林水産省など、様々な手続きサイトの窓口となっています。しかし、それぞれのサービスの利用に当たっては、個々に情報を登録する必要があり、あくまで各省庁のシステムへの入口サイトにすぎないのです。便利だとは思いつつ、寄せ集め感のあるサービス構成に、これでいいんだっけと、思ってしまいました。

 

そもそも、社会保険の申請については、世界最先端のIT国家を目指すことを標榜したe-Japan戦略のもと、2001年に開設されたe-Govという政府の共通手続きサイトが今でもあります。ただ前述のとおり使い勝手は良くないと思います。実際にe-Govの普及率は10%程度に留まるのだそうです。今回の社会保険もeGovでやるよりは社会保険事務所に行ったほうが早いと思っていました。

そうはいっても、本来はもともと一元的な共通手続きサイトであるe-Govのユーザビリティを改善するのが筋だったのではないかと思ってしまうのです。悪く言えば、gBizIDは、これまでの手続きを使いやすくしたとはいえ、e-Govとダブルサービス提供手段であり、縦割りのシステムを前提にしたその場しのぎの対応という感じがしなくもないのです。

 

全体最適化を目指す電子政府のあるべき姿からすると、こうした対応が望ましくないのは言うまでもないことです。土地を始めとして、様々な取組が各省庁や業界ごとの別々の体系で管理されている状態に切り込めていないわけで、わが国のICT化の遅れを改めて感じてしまいます。それだけに、菅政権が注力することを表明したデジタル庁の取組に期待したいと思います。

デジタル庁関係者は9月の連休中も合宿で、政府のDX(デジタルトランスフォーメーション)の方向性を検討したそうです。2000年代初頭から、何度となく繰り返されてきた掛け声倒れのICT化に変革をもたらしてくれるのか。新政権の目玉政策を担う新設のデジタル庁が今後打ち出す方針に注目したいと思います。

 

 

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