MAP’s+Oを考える

 この秋に出された、経済産業省の「地域の持続可能な発展に向けた政策の在り方研究会」報告書」では、これからの地域の持続的に向けた体制として、MAP’s+Oというモデルを提起しています。

 MAP’s+Oは、まちづくりや、地域づくりにおける次のプレイヤーの頭文字を意味しています。

  • マネージャー(Manager ):地域の持続的発展に取り組む中核的な人材(地域内人材と地域外人材が連携する場合を含む
  • アグリゲーター(Aggregator ):広域で複数の地域に、 地域の持続的発展に資する製品又はサービスを 供給する地域外法人
  • プレイヤー(Player ):マネージャー及びオーガナイザーに対し、協力・連携する地域内外の法人(又は人材)
  • サポーター(Supporter ):地域の持続的発展に取り組む人材・組織への支援を行う地方公共団体又は国
  • オーガナイザー(Organizer ):マネージャーが所属する組織であり、アグリゲーター及びプレイヤーと連携 する主体であり、サポーターの支援先である 取組の中心的な役割を担う 地域内法人

出所)「地域の持続可能な発展に向けた政策の在り方研究会」報告書(2020年9月)

 

 まちづくりの体制論については、これまでにも「バカモノ・ワカモノ・ヨソモノ」や「まちづくりの7人の侍(発案者、賛同者、リーダー、メンバー、後援者、調整役、アドバイザー)」等のモデルが提起されてきました。こうしたこれまでのまちづくりの体制論と比べると、今回の報告書の体制は、広域で複数の地域に、 地域の持続的発展に資する製品又はサービスを 供給する地域外法人と提起されている「アグリゲーター」というプレイヤーがいることが特徴といえるでしょう。

 アグリゲーターの具体例としては、中山間地域の買物難民へのサービス提供を目的に生まれた移動スーパー「とくし丸」や、バスルートに見立てた共同輸送ルートに沿って、生産者がバス停で野菜を出荷し、買い手が野菜をバス停まで取りに行く「やさいバス」等があげられます。前者は徳島で、後者は静岡で生まれ、大手企業とも連携し全国的に事業を展開するようになっています。さらにエネルギーやモビリティの分野ではより大きな仕組みづくりも検討されています。

 

 今日、たしかにこうしたアグリゲーターと呼ばれる事業主体が全国的に展開する新たなサービスがまちづくりにも影響を与えるようになってきているようです。

 例えば、先日訪問した板橋区のハッピーロード大山商店街では、この9月に空き店舗を利用して「かめやキッチン」がオープンしていました。店の運営主体はハッピーロード大山商店街が100%出資するまちづくり大山みらい株式会社。そしてオープンに当たっては、空き家活用サービス「アキサポ」(株式会社ジェクトワン)と連携しています。

 全国展開している空き家活用サービスと連携することによって、まちなかにおけるスタートアップの推進が目指されており、アグリゲーターが提供するスケールアップしたサービスがまちづくりの主体にとっての新たな選択肢を提供するようになっているという感覚を持ちました。その意味で、MAP’s+Oというとらえ方は新しい仕組みづくり向けたインサイトを与えてくれると思います。

 

 一方で、新しい地域づくりの主体としてのアグリゲーターの重要性が強調されすぎることには、危うさも感じます。

 例えば、報告書では、「多岐にわたる 地域課題に取り組むに当たっては、オーガナイザーが責任の所在を明確化して、中心的な役割を果たすことが適当である」との記載もあるのですが、オーガナイザーとなる組織が作られるプロセスについて、「アグリゲーターが中心となり、地域拠点をつくることが契機となるもの、個別事業を実施していた プレイヤーが、 必要性に応じて多様な事業を手掛けるようになり、結果的にオーガナイザーとして多様な機能を果たすことになるもの、既存組織が存在せず、マネージャーを中心として新たな組織を立ち上げるものなど、様々なケースがあり得る」とされており、軸足のぶれを感じてしまいます。

 多様な可能性は否定しませんが、「オーガナイザーを取り巻く状況は 様々なケースがあることから、オーガナイザーに対する施策の検討に当たっては柔軟性の確保が求められる」という表現をみると、アグリゲーターの振興を位置付けるという答えありきの記述にしか見えないように感じてしまいます。

 

 まちづくりに当たってやはり社会的な共同体としての地域に軸足をおくことが不可欠の要件だと思います。地に足がついた取組のもとでのICT活用の重要性を強調したいと思います。

 

 

 

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