変わる企業立地と国土構造

Covid-19の勢いが収まらないなか、企業のオフィス立地の見直しがいよいよ本格化したように思います。

先日1月20日には、電通が汐留に聳え立つ48階建ての本社ビルの売却を検討中とのニュースが報じられました。電通本社は約9,000人の社員が勤務するオフィスですが、感染防止のため在宅勤務を推奨した結果、最近の出社率が約2割となり、余剰スペースが発生しているとのこと。広告量が減り、業績が悪化する中、経営効率化の一環で賃貸へ移行する判断が働いたようです。

 

本社売却とはならないまでも、オフィスの在り方を見直す動きは、他社でも広がっています。

例えば、富士通はオフィス出社率を25%に抑えていると聞いていましたが、今後約3年でオフィス面積を半減させる計画も進行しているようです。さらに、配属地以外での遠隔勤務を認め、単身赴任の解消につなげるなど、勤務形態の見直しも進められているとのこと。例えば親の介護や配偶者の事情で遠隔地に移住せざるを得ず社員が退社するケースがあったらしく、人材を引き留めるために部署やポストを変えずに継続勤務できるようにするとともに、単身赴任者も本院が希望すれば家族がいる場所での勤務が可能とするようです。

千代田区に本社を構える人材派遣会社パソナは、兵庫県の淡路島へ、本社機能の一部移転を公表したことで話題となりました。現在は、淡路市の複合文化リゾート施設を活用し、2020年末で約500人が勤務中とのことですが、2024年(令和6年)5月までに、東京本社で勤務するグループ約1,800人のうち約1,200人を島へ異動させることを公表しています。

また、休暇先で一定時間を業務に充てるワーケーションもJAL等の企業が導入を進めています。

 

統計にもこうした動きが現れてきました。1月29日に総務省が公表した住民基本台帳に基づく2020年の人口移動報告では、東京都の人口移動について、7月から6か月連続で転出者が転入者を上回っていることが判明しました。東京都への一極集中の流れが変わりつつあることがうかがわれます。

昨年1年間でみると、東京都の転入超過は3万1,125人であり、東京都はまだ転入超過ではありますが、その規模は2019年の4割以下に縮小しています。東京都からの転出が多いのは、埼玉、神奈川、千葉の3県で東京近郊への移転が中心です。東京圏以外でプラスとなっている地域は大阪、福岡、沖縄に限られますが、2019年と2020年を比較すると転出超過数は減少傾向を示しています。国土構造については潮目の変化を感じさせる動きだと思います。

 

 

東京からの分散の動きについては、covid-19の終息後はもとに戻るという見方も一部にあるようですが、私自身はテレワーク、テレビ会議などICT利用が普及した結果、本社売却や本社移転等の動きが顕在化しており、非連続的な変化をもたらしつつあると思っています。

テレビで、covid-19の中で都心部への居住が進んでいるとの話をするコメンテーターの話をみることもありましたが、統計できるとマクロにみるとそういう動きにはないことがよくわかります。

住み替えに伴う東京への一極集中の緩和や、テレワークに伴う勤務形態変化は、地方の活性化に資するだけでなく、女性や高齢者などの就労を進め、中長期的な我が国の労働不足の緩和にも資するといわれています。

今日、就業形態やライフスタイルの変化を踏まえた新しい国土や地方社会の在り方とその実現方策が求められていると思います。アフターコロナを展望した新しい形態の地方創生の実現に期待したいと思います。

 

 

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