地域通貨を考える -拡大するトークンエコノミー-

 

最近、デジタル通貨の浸透・普及が進む中で再び注目を集めている地域通貨について調べてみる機会がありました。いろいろな分け方があるのかもしれませんが、経済の稼ぐ力に着目し、①域内循環を目指す地域通貨と、②外貨の獲得を目指す地域通貨に分けてみました。

域内循環をめざす地域通貨は、域内住民の地域における消費の促進を目指して発行するタイプです。商店街のポイントや、1999年に発行された地域商品券がこれに該当します。長野県佐久市の「佐久っ子WAON」等、利用金額の0.1%を地域に寄付する、ご当地WAONもこのカテゴリーに入ります。

最近の取組の中では松山市の商店街が発行した「machica(マチカ)」という地域通貨が面白いと思いました。大街道、銀天街等の主要商店街で買物をするとポイントがたまることに加え、地域のボランティア活動やイベント参加をした時もポイントがもらえるようになっていて、コミュニティづくりのプラットフォームとしての機能を有しています。また、pay payやLINE pay等の大手企業が提供しているプラットフォームを使わずに、株式会社まちペイという独自の運営会社を立ち上げたところが、域内循環を高めるうえでの注目ポイントといえます。

第2の外貨の獲得をめざすタイプは観光客に対するクーポンなどが該当します。地域通貨として取り組んだ代表例として、にいがた食の陣実行委員会が発行している「湊町券」(旧うまさぎっしり湊町券)があげられます。もともと新潟の冬の観光の目玉づくりの一環で、食に関するイベントや情報誌とあわせて、県外客向けに発行された10%のプレミアムクーポン付商品券です。1割のプレミアムが付くので、県外から新潟を訪れる旅行客やビジネス客にとってはかなりお得感のある消費券です。食の陣が最初に開始されたのは1992年のことですので、成果をあげて定着した取組ということができます。

 

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最近の動向としては、もともと域内循環を目的として発行していた地域通貨が外貨の獲得を目指すようになり、外貨の獲得を目指していた地域通貨を地元の人も使えるようにという両者を統合する動きに注目したいと思います。

前者の取組として、埼玉県深谷市の地域通貨「ネギ-(negi)」の取組をあげることができます。もともとキャッシュレス対応で導入された地域通貨ですが、最近になってふるさと納税の返礼品として「電子感謝券」を発行しています。還付率は3割で5万円のふるさと納税を行うと15,000negiの商品券がもらえます。電子感謝券は道の駅等、市内の指定店舗で使用可能となっていて、市外からの需要を惹きつける手段となっています。

また、後者の取組として新潟県外の住民を対象に発行していた先述の湊町券が、コロナ感染症で疲弊した地元飲食店や商業者の進行手段として、最近は地元民でも買えるようになっています。

せっかく分けて整理してみたのですが、だんだん域内循環、外貨の獲得という区分はあまり意味をなさなくなっているようです。またこうした動きに、地域通貨の有用性や汎用性が高まっていることを感じました。

 

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今日、このように地域通貨の流通範囲が拡大してきた背景として、2018年に政府が推進したキャッシュレス化をきっかけにデジタル通貨の利用が一気に広まったことと、ブロックチェーン技術を用いることにより、「トークン」と呼ばれる仮想通貨の発行と流通が容易になったことがあげられると思います。

最近では、地域通貨のプラットフォーム「chiica(ちいか)」を提供する㈱トラストバンクや、「地域トークン」のオープンソースを提供するGMOインターネット㈱等、地域通貨の発行を支援するプラットフォーマーが増えており、こうした中で地域通貨の発行が容易になってきているのです。利用の敷居が低くなる中で、「仮想通貨」を用いた経済圏、いわゆるトークンエコノミーが拡大しつつあるのだと思います。

こうした動きをみていると、地域通貨は今後の地域の稼ぐ力強化の手段としての存在感をますます高めることになりそうです。投資という形で地域における起業家のための資金調達を目指す岡山県西粟倉町のNACの取組等、工夫次第でまだいろいろな使い方が生まれてきそうです。今後の動きに対するアンテナを高めるとともに。自分でも新しい使い方を考えてみたいと思っています。

 

プラットフォームchiicaのもとで機能する深谷市の地域通貨negiの仕組み

         出所)https://chiica.jp/

 

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