着眼大局、着手小局

社会人になってから、好きになった言葉のひとつに「着眼大局、着手小局」があります。中国戦国時代末期の思想家荀子の言葉です。ものごとを俯瞰的に見ながら、目の前のことにも最新の注意を払えという観点が、コンサルタントとして仕事をやる心構えとしてしっくりきて、いつしか座右の銘となりました。

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仕事をやっている中で、この言葉の重要性を実感したのは、沖縄の基地対策が盛り上がりをみせた90年代後半、国土計画の重鎮だった故下河辺淳氏の指導のもと、「国際都市形成構想」の具体化策として、沖縄国際南北センター構想を策定した時のことです。

下河辺氏から、南北問題の解消に沖縄の亜熱帯性を活かすことが可能という視点で、北の先進国で開発された技術を、南の熱帯地域で活用することができるようにするための技術の翻訳センターを沖縄に創設すべきという提案を受けました。自分にはとても思いつかない、稀有壮大な構想力にびっくりしたことを覚えています。

その実現に向けて取り組んだのが、南北対話の会議体を定着させようという取組で、氏が外務省を巻き込み、国際交流基金の事業としてセミナーの開催を積み重ねました。どこに働きかければ、実現に向けた歯車が動き出すか、ツボを抑えた動き方についても大いに学ばせていただきました。

自分の中では、まさに着眼大局、着手小局の実体験であり、貴重な経験だったと思います。世の中を動かすような事を成すには、人にまさかと思わせるような大きな見方の構想力と、なるほどと思わせる実行力が必要だという確信を持ちました。その後、昭和の参謀と呼ばれた瀬島隆三氏が、この言葉をよく口にされていたことを知り、思いを強くした覚えがあります。

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最近、着眼大局、着手小局の大切さを実感するのが、科学技術政策としての戦略イノベーションプログラムの取組。斬新なだけでなく、最終的な出口としての社会実装が求められています。科学技術政策として採択されているだけあって、長期的な視点に立った、すなわち大局観にたった検討課題にチャレンジしているわけですが、終盤「社会実装」を考える段階になって、現場の関係者の視点に立った着手小局の大切さを実感します。

例えば、フードシステムの変革につながる仕組みとなる情報連携基盤スマートフードチェーンプラットフォームや、そのもとでトレーサビリティと流通品質を認証する「フードチェーン情報公表JAS」をどのように、社会的に機能する仕組みとして定着させるのか、斬新な発想を単なる思い付きに終わらせないようにするためにどうすればよいのか、現場のニーズに即して知恵を絞ってみたいと思っています。

着眼大局、着手小局という2つの視点のバランスと局面にあわせたモードで行動できるようになることを行動規範として頑張りたいと思います。

(名取雅彦)

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