先日、久々にバンコクを訪問する機会があり、青果物の販売状況等をみてきました。印象に残ったのは、生鮮農産物の売場にオーガニックコーナーが設けられていること、QRコード等も利用した食品表示が思ったより普及していることです。
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タイがオーガニック大国であることは知られていますが、現地を訪れてみて実感を持つことができました。スーパーの青果物売場にはオーガニックコーナーがあり、通常野菜の1~3割増し程度で販売されていました。
タイの消費者が生鮮農産物を購入する際に重視することについては、食品の清潔さ77%、食品の新鮮さ63%、価格56%、ラベル表示34%、トレーサビリティ28%、加工プロセス19%等という調査結果があります(Qualitative&Qualitative Shoppers Research)。オーガニックはこれらのうち、ラベル表示やトレーサビリティに関わるテーマであり、約3割の消費者がオーガニックに関心を持っていると推察されます。
食品の中でも、野菜や果物は特にオーガニックが重視されているようです。Statistaが2021年9月に実施した調査によれば、有機産品であることを重視する割合は野菜や果物が86%と、他の産品に対して圧倒的に高い回答となっています(第2位肉類46%)。
野菜や果物のオーガニック栽培が重視されている背景として、2017年8月にタイの消費者団体タイの消費者団体「タイランド・ペスティサイド・アラート・ネットワーク(タイPAN)」のレポートがあげられます。市場、スーパーなどで販売されていた野菜、果物の残留農薬の調査を実施し、サンプルの多くから基準値を超える農薬が検出されたと発表したのです。無包装の野菜や果物は産地表示がされておらず、中国野菜が多く輸入されていないこと、SNSの映像情報などもあり、消費者が恐怖感を頂いたようです。
一方、通常品に対するオーガニック産品の価格は日本より安めです。これは、タイの有機認証「Organic Thailand」が無償で利用できることによります。オーガニック栽培は手間がかかりますが、日本のように認証コストの負担がないこと、消費者に対する訴求力が高いことから、取り組む農家も多いようです。

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タイの食品売り場を訪れてもうひとつ印象に残ったのが、農産物のトレーサビリティにおける食品表示の浸透とIT活用の普及です。パックされた成果物については、食品表示が義務付けられているそうで、原産地やロットサイズなどの商品表示がわかります。こうした中にQRコードが付けられて生産者の顔がわかる産品も普通に売られていて、日本より進んでいるのではないかと思います。
もちろんウェットマーケットと呼ばれている、ローカル市場で売られている野菜や果物はこの限りではありませんが、大手のスーパーで販売されている野菜や果物はわりと表示がきちんとしています。違反が見つかった場合の、罰則が厳しいこともあり、大手の量販店がサプライヤーに対して納入条件としていることもあるようです。
特に、大手のスーパーで販売されている野菜や果物は表示がきちんとしています。違反が見つかった場合の、罰則が厳しいこともあり、サプライヤーに対して納入条件としていることが影響しているとのことでした。
トレーサビリティに係る情報を共有するプラットフォーム開発も注力されています。例えば、Trace Thai等のプラットフォーム型のアプリを、政府と大学が連携して開発し、実証作業を行っています。コメを対象とするモデル実証の段階で、実際の普及はまだこれからとのことでしたが、店頭でQRコードを張り付けられた商品が普通に販売されていることもあり、仕組みが定着する素地が形成されていると思いました。

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こうしたオーガニック認証を無償で行い、トレーサビリティ確保のためのプラットフォームの構築を進めるタイの状況をみて、改めて食品流通に対する関心の高さを実感しました。また、そうした期待に応える方策として、認証等の仕組み構築に加えて、スマートフードチェーンの構築に向けた期待の高さを実感しました。
我が国は、今後の食品流通における競争力を高めるために、ベースとなる規格面で先行する必要があるといえます。国際競争の中で、先行しつつも協調できるところは連携し、グローバルな視野に立った仕組みづくりを推進することが重要だと思います。
マインズ・アイ代表取締役 名取雅彦
名取雅彦