台湾の農産物トレーサビリティ制度

今年に入って、スーパーで「TAP」と記載された黄緑色のマークが添付されたQRコード付きの台湾産のパインアップルをみつけました。QRコード付きの農産物は、東南アジアではよく見かけますが、日本国内ではほとんど見かけることがなかったので、購入してみました。

QRコードを読み取ってみたところ、産地、生産者、生産履歴等、細かく記載されていました。高尾の南東屏東郡産。出荷は2月19日、収穫2月15日ですが、定植は2021年7月29日。収穫までに2年半。パインは、収穫までに時間がかかるということがわかったり、産地の様子がわかって台湾におけるパイナップル生産の現場に思いを馳せることができました。異国の消費者にとって、産地の情報はありがたいとも思いました。

その後、他の産地、異なる営農法人のパインアップルにも同じマークが添付されているのを発見し、利用が広がっていることを知りました。

 

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そこでマークについて調べてみたところ、添付されていたマークに記載されていた「TAP」は「Traceable Agricultural Products」の略で、台湾には生鮮食品のトレーサビリティのための認証制度であることがわかりました。

取組が開始されたのは2003年と20年前のことで2007年に法制化され多様です。その後2019年に法改正があり、2020年から改めて政府が改めて普及に注力していることがわかりました。例えば、TAP認証を受ける際には3分の2のコストを対象として、年間1ha当たりTWD15,000(約7万円)の補助金が支給されたようです。購入したパイナップルは2021年7月定植のパイナップルなので、政府が普及に注力した時期のパイナップルのようです。

2022年には旧法からの移行措置も終了し、新制度を本格運用できる環境が整ったようです。現在は、トレーサビリティのためのサイト(https://taft.moa.gov.tw/mp-2.html)が公開されており、対象品目がパイナップルだけでなく多岐にわたっていること、台湾におけるGAPとも連動していることもわかりました。

台湾は、間違いなく農産物のトレーサビリティで先行している国だと思います。

 

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日本の場合、狂牛病の流行を受けて、牛肉については生涯同一の番号で生産履歴情報を管理する個体識別システムが導入されています。ただ野菜や果物などの農産物については、有機JAS、生産情報公表JAS等の関連制度はあるものの、有機JASを除くと利用が一部に留まっていますしシステム利用は導入が遅れています。

最近では、茨城県旭村のアールスメロン等、Q!Rコードが添付されていて生産者の顔やメッセージだけでなく、栽培履歴や防除暦も記載している産品が出てきています。ただ国内では消費者の認知度も低く、利用はまだまだの状況だと思います。流通行程の取り扱いと情報の公表を規定するフードチェーン情報公表JAS制度が制定されたものの、実際の利用品目が現れるまでにはまだ時間がかかりそうです。

 

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ただ海外の状況をみると、台湾だけでなく、有機栽培に注力するタイ、食中毒の発生時に24時間以内にトレーサビリティ情報を提出する必要がある米国など、食品の履歴情報の重要性はますます高まることが見込まれます。

輸出市場の拡大を実現するためにも、農産物の高付加価値化を進めるためにも、食品のトレサビリティ情報を社会的に共有するための環境整備に改めて注力する必要があると思います。

 

株式会社マインズ・アイ

代表取締役 名取雅彦

 

 

 

 

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