Farmers Marketを支える仕組み ―ワシントン州の中間支援組織―

◆シアトルの流通現場から

シアトルで農産物や食料品の流通現場を見てきました。Costco、T&T、QFCといった大手スーパーだけでなく、滞在先近くの Seattle Supermarket や Farmers Marketを訪れました。

米国でも、AmazonなどのECが台頭し、Costcoや大手スーパーマーケットは激しい競争を繰り広げており、食品や日用品の流通業は大きな変革期を迎えているようです。CostcoやT&Tは規模が大きく、効率化が至上命題であることが窺われます。その一方で、シアトルでは数多くの Farmers Market が開催され、生産者と消費者を直接結ぶ場として定着しています。

例えば、今回訪れたIssaquahのマーケットではフルートの演奏会も行われており、買い物の場であるだけでなく、地域住民の交流の場としても機能していることが印象的でした。

◆数字でみるワシントン州のFarmers Market

2024年のWSFMA統計資料によると、シアトルを擁するワシントン州のWSFMA加盟マーケットは103件、出店事業者数は延べ6,421件(うち農家は2,036件)にのぼります。年間延べ約432万人(概算)が訪れています。ワシントン州の人口が約790万人であることを踏まえると、相当な数です。1マーケットあたりの平均売上は約84万ドル(約1.3億円)、103マーケット全体では約8,400万ドル(約126億円)に達しています。1日あたり平均売上は3.2万ドル(約480万円)です。全体の流通からみれば大きいとは言えませんが、そこそこの存在感を持っています。

コミュニティの場としてマーケットが機能していることは、その実施団体の性格からもうかがわれます。運営主体の約85%が非営利団体ですが、訪問したIssaquahのような行政直営のマーケットも9%存在しているそうです。また、公表されている統計資料によれば、2024年のマーケットにおけるコミュニティブースは1,398件で、前年から21%増加しています。

◆半世紀近く続く中間支援組織

Farmers Marketの普及に向けた中間支援団体として、協会組織WSFMAが設立されていることも、今回、初めて知りました。マーケットの開催は広がってきてはいるものの、個々バラバラで連携基盤については聞くことがない日本とは違うと思いました。

WSFMAは1979年の設立で、設立後既に半世紀近い歴史を有しています。そのミッションは、会員サービス・教育・政策提言を通じ、活気があり持続可能なファーマーズマーケットを支援・促進することです。

2024年の売上からみた構成団体は、農家49.4%、加工業者22.5%、調理食品16.8%、工芸9.7%、再販業者1.3%となっています。「誰が作ったのか」を州レベルの共通定義で線引きし、その定義に沿って全マーケットが売上を報告していること、再販業者が約1.3%にとどまり、生産者による直売支援に注力していることがわかります。

出典: WSFMA統計(2024年、n=100)。売上ベースの構成比。
事業者数でみると農家は31.7%(2,036件/6,421件)。

WSFMAの運営財源を確認したところ、年間支出は約4,000万円、収入の66%が事業収入(会費・年次会議参加費等)となっているようです。寄付・助成金への依存は13%にとどまり、直近4年度は連続黒字を達成し、純資産は年間支出の約1.3年分となっています。決して大きい事業規模ではありませんが、横串を通す組織が確立していることが、コミュニティ基盤としてのマーケットを機能させるうえで大きいと感じます。

面白いのは加盟マーケットの会費設計(負担率)で、マーケットの売上規模別に24段階に区分されています。売上2.5万ドルの小さな市場は0.8%、平均的な市場(84万ドル)は0.13%、売上600万ドル超の大規模市場は0.03%以下で、しかも1,800ドルで頭打ち。絶対額は大きな市場ほど多く払うが、率は下がります。「大きな市場が小さな市場を支えつつ、大規模市場の負担も青天井にしない」——小さな市場が加盟し続けられる価格設計を工夫していることも注目すべき点だと思います。

◆リアルな「場」を持続させるために

流通の効率化が進む時代だからこそ、リアルな「場」が持つ価値は、むしろ高まっているのかもしれません。WSFMAの取組はその価値を持続可能なものとするためのヒントを提供しているように思います。日本でもマーケットの開催は広がりを見せているようですが、さらなる定着に向けて、中間支援組織の確立も課題だと思います。かつて地域再生エリアマネジメント負担制度について考えた際にも、受益者負担と合意形成の仕組みが鍵になると感じましたが、同じ論点がここにもあるように思います。

株式会社マインズ・アイ

代表取締役 名取雅彦

出典: WSFMA “Washington Farmers Markets Vital Statistics Report for 2024/2023″(2025年8月)、WSFMA公式サイト、IRS Form 990(EIN 91-1320916)
※ドル円換算は1ドル=150円で計算

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