AMAZONは2025年10月28日、約1万4,000人の従業員を削減すると発表しました。広報資料によれば、この決定は「企業全体の効率化と俊敏性の向上」を目的としたものであり、AI時代に対応するための組織再編の一環とされています。解雇規模が大きいことから、このニュースは日本国内でも大きく報道されました。
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既に今年2月、アンディ・ジャシーCEOは「管理職の階層を減らすことで業務を効率化し、官僚主義にとらわれず迅速な意思決定を行えるようにする」として、管理職に対する一般社員の比率を15%引き上げる計画を発表していました。モルガン・スタンレーは、この改革により約1万3,834人の管理職が削減され、3,138億円〜5,380億円のコスト削減効果が見込まれると試算しています。
また、この改革の一環として、AMAZONは「官僚主義通報ライン」を設け、業務の遅延につながる非効率な手続きの報告を社員に促すなど、よりスリムな経営体制への移行を進めてきました。
10月28日付で、AMAZONの人事・技術担当のシニアバイスプレジデントが発表した声明では、「今回の人員削減は官僚主義をさらに排除し、階層を減らし、リソースを再配分することで、最大の挑戦分野や顧客の現在および将来のニーズに重点的に投資するための取り組みの継続である」と改めて強調しています。
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今回の人員削減は、生成AI(Generative AI)の急速な普及とも密接に関連していることにも注目したいと思います。6月18日のメッセージで、ジャシーCEOは次のように述べています。
「より多くの生成AIやエージェントを展開するにつれて、私たちの仕事のやり方も変化します。現在行われている仕事の一部は人が担う必要がなくなり、代わりに新しい種類の仕事が増えるでしょう。どの領域にどの程度の影響が及ぶかは予測が難しいものの、今後数年でAIの全社的活用により効率が向上し、従業員数は減少すると見込まれます。」
さらに、AIエージェントの可能性について次のように語っています。
「AIエージェントは、私たちが顧客のためにイノベーションを起こす範囲とスピードを劇的に変えるものです。」「エージェントを使うことで、ほぼすべての業務をより高い出発点から始められるようになります。」「AMAZONは今後も“世界最大のスタートアップ”のように運営し続けます。ここでは、AIがその大きな触媒となるでしょう。」
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今回のAMAZONの人員削減は、生成AIのエージェント化がもたらす変革のインパクトを象徴する出来事といえそうです。企業や社会が急速に変化するなかで、求められる人材像も確実に変わりつつあります。
AIを「脅威」ではなく「触媒」として捉え、変化を成長の糧にできる柔軟さ、まさに「新興企業のようにしたたかに生き抜く力」こそが、これからの時代に求められていると改めて感じます。
株式会社マインズ・アイ
代表取締役 名取雅彦

