副首都機能の整備について考える

◆動き始めた副首都構想

自民党と日本維新の会の連立政権発足後、取組が進展している政策の一つに、副首都機能の整備があります。昨年10月の高市政権発足に伴う連立合意に盛り込まれた項目ですが、3月9日には法案が衆議院事務局に提出されました。

法案によれば、「副首都機能」とは、東京圏と並ぶ我が国の経済の中心として日本の成長を牽引するとともに、災害等の発生により首都中枢機能の全部又は一部を維持することが困難となった場合に、その機能を代替する機能を指します。

その主なねらいは、第1に、政治・行政・経済等の中枢機能や人口が東京圏に一極集中していることにより、東京圏とその他の地域との間に経済的な格差が生じていること、第2に、災害その他の非常事態が発生した場合に、首都中枢機能の維持が困難となるおそれがあることにあります。

◆副首都構想は「分都論」の延長線上にある

この副首都構想は、1990年代に議論された首都機能移転論との関係でいえば、「分都」という考え方に近いように思われます。分都論とは、東京に首都機能を残しつつ、一部の国家機能を別の都市に配置するという発想です。たとえば、立法機能は東京、行政機能は別都市、あるいは危機管理機能のみを別都市に置くなど、首都機能を分散配置する考え方です。全面的な遷都ではなく、「東京+もう一つの中枢都市」によって国家運営を行うモデルといえます。

現在の副首都構想も、東京を首都のままとしつつ、大阪などに危機管理機能、行政機能、経済中枢機能、データセンター、企業本社機能などを平時から分散させ、非常時には東京を代替できるようにするものです。その意味では、「全面移転型の遷都」よりも、「二都制」あるいは「分都制」に近い構造を持っているといえます。特に、「東京が被災しても大阪で一定の国家運営を継続できる」という発想は、分都論の延長線上にあるとみてよいでしょう。

ただし、従来の分都論では、国会や中央省庁などの国家機関をどこまで恒常的に移すかが中心的な論点でした。これに対し、現在の副首都構想は、行政だけでなく、経済、金融、デジタル、企業本社、国際機能まで含めて「第二の成長拠点」を形成することに重点があります。単なるバックアップにとどまらず、平時から東京と役割分担しながら成長を担う「東西二極型の国土構造」を目指している点に特徴があるといえそうです。

◆副首都構想のメリットと懸念

これまでの論考を見ると、副首都構想のメリットとしては、首都直下地震等への危機対応力の向上、東京一極集中是正の象徴的効果、地方分権や広域行政改革の契機となることなどが挙げられています。

一方で、懸念事項としては、「東京+大阪」の二極集中にとどまる可能性、行政コスト・重複コストの増加、実効性が不透明であることなどが挙げられます。実際、これまでにも業務核都市の整備や文化庁移転など、部分的な分散は行われてきましたが、政治・行政の中枢機能そのものは大きく動いていません。また、「国会等の移転に関する法律」についても、移転候補地の選定まで議論が進みながら、その先の実施には至りませんでした。副首都法も、予算措置、機関配置、人事制度まで踏み込まなければ、理念法にとどまる可能性があるといえます。

◆ドイツのベルリン・ボン体制に学ぶこと

また、海外に目を向けると、600km離れたベルリンとボンに連邦首都が存在するドイツの事例が参考になります。1989年のベルリンの壁崩壊後、首都機能はベルリンへ移転しましたが、現在でもボンには一定の連邦機能が残されており、ベルリンが首都である一方で、ボンも補完的な政府都市としての役割を担っています。

当初は両都市が比較的対等な位置づけを持つようなイメージもありましたが、その後、連邦議会や連邦参議院をはじめ、議会・政府・中枢行政機能がベルリンに集積するようになりました。その結果、ボンは重要な行政・研究・国際機関を抱え続けたものの、全体としては「補完的な政府都市」という位置づけに落ち着いたとみることができます。

このような二重構造については、職員の出張、テレビ会議、文書移送などのコストが大きく、効率性に欠けるという批判もあります。一方で、連邦機能を維持することによって地域経済を支えられることや、ドイツの連邦制・分権型国家像に合致するという支持も根強く、完全なベルリン一極集中には至っていません。むしろ、危機対応や地域均衡の観点から、ベルリンとボンの二重中枢を一定程度維持する方向が続いています。

ドイツの事例は、機能別分散による複都型国家運営の現実性を示す一方で、分散に伴う重複コストや、意思決定機能が一方に集まりやすい力学にも注意が必要であることを示唆しています。日本でも、仮に副首都法が成立したとしても、既存の中枢機能が短期的に大きく移転するとは考えにくく、実際には新たな機能をどこに先行配置するかが問われることになるでしょう。

◆地方分散の契機として

このように、副首都構想の実現にあたっては多くの課題があります。しかし、改革が進んでこなかった日本の統治機構や国土構造のあり方を、改めて見直す契機になることは間違いありません。

重要なのは、それが単なる「東京のバックアップ」や「東京・大阪の二極化」にとどまるのではなく、地方分散や広域連携を含む、より多層的な国土構造の再編につながるかどうかです。理念先行で終わらせず、実効性を伴う制度設計へと議論が深まることを期待したいと思います。

 

株式会社マインズ・アイ

代表取締役 名取雅彦

 

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