欧州拠点としてのオランダ -シェアリングの文化に思う-

ホンダの英国西部の工場閉鎖など、最近BREXITに伴う日本企業の事業所立地の見直しに関する記事を良く見ます。こうした記事を見ながら、昨年8月にパナソニックが欧州統括拠点をロンドンからアムステルダムに移すと公表したことを思い出しました。

パナソニックの欧州統括拠点の移転は二つのことで印象に残りました。ひとつは BREXIT で揺れる地域市場を見据えた早目の意思決定。企業の判断として欧州に軸足を置く限り、英国を出るべきという判断をいち早く行ったことが印象に残りました。もう一つは、オランダという移転地域の選択。オランダには、シェアリングの思想が定着しているという話を聞いたことを思い出したのです。

数年前に訪れたアイントホーフェンのフィリップスミュージアムには、入口にゴッホの農民一家がジャガイモの食卓を公表囲む絵が掲げられています。質素な食事ながらも、家族の団らんを感じさせる農家の絵。この絵は、砂地で痩せた厳しい環境の中で、オランダではシェアリング(分かち合い)の精神が育まれてきたことを象徴しているそうです。その印象が強かったのか、社内で技術開発するのではなく、外部の優れた技術を購入するというオープンイノベーションがオランダで誕生した背景に、こうしたシェアリングの文化が原点にあるという話を聞いて、妙に納得感を持ちました。

また、オランダが、世界初の株式会社組織として、東インド会社を発明するなど、分かち合いに対する思想をずっと活用しようとしてきたことにも思いを馳せました。

もちろん企業の立地拠点としてのオランダが交通の要衝として欧州の流通・物流拠点としてEU内の様々な地域とのネットワークを形成しているということはいうまでもありません。 ロッテルダムの港湾、アムステルダムの空港と交通基盤が整備されていることとあわせて、商流の機能が集積しています。花や食品産業の卸売機能が有名ですが、医療機器など、多様な製品の取引拠点としての機能が集積しています。

さらにオランダでは、オランダ語以外にも、英語、ドイツ語、フランス語など、多言語が通じます。日本企業が立地する場合、ドイツやフランスに直接立地するより、関係者とのコミュニケーションに困ることはなさそうです。言葉通じやすいオランダで戦略を練って、翻訳して他国に展開するということは利にかなっていると思います。

しかし、アイントホーフェンで聞いたオランダにはシェアリングの文化が定着しているという説明はこれまでの理解に新たな風を吹き込んでくれました。流通・物流の拠点性、多言語が通じるということは、ある意味で常識として理解していたのですが、これらに加えてシェアリングの文化(思想と仕組み)が定着しているという説明を聞いて、オランダの強みの凄みを感じたのです。パナソニックの欧州統括拠点移転の意思決定に、 こうしたことを思い出し、 納得感を持ちました。

改めてオランダの企業立地の取組から、いろいろなヒントを得られるように感じます。

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