アフリカのアグリテックに思う

最近、アフリカのアグリテックについて調べているのですが、ブロックチェーンを用いたソリューションがけっこう普及していることがわかりました。コストが高いため、日本ではあまり普及していないのですが、アフリカではいくつかのソリューションが実際に利用されています。

例えば、ナイジェリアはアフリカ最大の国家ですが、1人当たりGDPでみた所得水準が約2,200ドル(世界150位)と低く、道路や灌漑施設等の社会資本の整備も遅れています。そんなナイジェリアで、ブロックチェーンを用いたアグリテックのソリューションが複数実際に利用されているという話を聞き、ちぐはぐな感じがして、少々驚いた次第です。

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調べてみると、農業・食品分野でブロックチェーンが利用されている背景には、社会的な信頼感の欠如があることがわかりました。例えば、農業・食品分野では、ミドルマンと呼ばれる仲介業者が農業生産者を買いたたくのは日常茶飯事のようです。当然、生産者はミドルマンのことを信用していませんし、一方で生産物を発注するオフテイカー(メーカーや小売店)もミドルマンのことを本当に信頼はしていないようです。

実際の取引についてみると、ミドルマンが最終需要者から調達を依頼された場合、買付資金が必要になるわけですが、オフテーカーが全額を渡すことはなく、一部の手付金のみを渡すそうです。ただその結果、ミドルマンも生産者から生産物を調達しにくくなり、十分な量の流通が確保しにくくなることがあるそうです。

こうした状況の中、ブロックチェーンを用いた場合、発注、仲介の依頼があったことを、発注金額を含めて記録することができます。ごまかそうとして改ざんがあった場合は記録が残るので、改ざんを防ぐことが可能です。結果、ブロックチェーンベースの情報があれば、生産者も安心して販売することが可能となります。そして、発注、仲介、生産物の納品がそろった段階で、資金決済を実施することで、取引の透明性を確保することが可能となるのです。

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ブロックチェーンはもちろん運用コストがかかるわけですが、アフリカの場合、社会的な信頼感の欠如がまん延しているため、市場の効率化による効果が十分コストに見合うものとなっているようです。

もちろん、農家のITリテラシーは低く、こうした技術を活用できる生産者は一部に限られています。ただ、ソリューションを提供するプラットフォーマがソリューションとあわせて営農支援サービスや、生産力の高度化に向けた資金調達の支援等も展開していて、農家の能力向上の一助となっているようです。

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日本とは違った形でアグリテックが普及しているアフリカの状況をみていると、それぞれの国の社会的な状況によって、取り組むべき課題が異なり、技術の使われ方も違ってくるということを実感します。

日本とは全く異なるアフリカのアグリテックの状況に考えさせられました。日本の課題を見返し、これまで見落としていた技術の適用可能性がないか、考えてみたいと思っています。

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