急速に拡大する生成AIの影響

最近、目をひいた記事のひとつは、Amazon Web Services(AWS)が2027年までに東京と大阪のクラウドインフラに2兆2,600億円投資するというものです。日本の国内総生産(GDP)に5兆5,700億円貢献し、国内で年間平均30,500人以上の雇用を支えるそうです。投資の背景にあるのが今後の生成AIの拡大に伴う日本の企業・行政の旺盛なクラウド需要とのこと。投資規模にもおどろきましたが、それ以上に生成AIの影響の大きさと広がりを改めて実感します。

今月、米国ラスベガスで開催された先端テクノロジーの見本市CES2024では、生成AIがテレビや冷蔵庫といった家電や自動車、さらにはホームロボットに搭載され、人間は生成AIに囲まれながら生活するという未来図を様々な企業が提供したそうです。

++

生成AIの影響は日本の地方都市にも及んでいます。例えば、同じタイミングで目に留まった記事は、シリコンウェハ―の加工で世界一のシェアを持つディスコが半導体製造装置に使う部材の新工場を広島県呉市で建設するというもの。400億円強を投資額し、半導体材料の切断や研削、研磨に使う砥石を生産するそうです。

やはり、生成AIや5G、自動運転等の普及・拡大に伴う半導体需要増が背景になっています。生成AIを活用するために必要な機械学習のために、格段に大容量のデータベースを処理する必要があり、演算処理を担うGPU(Graphics Processing Unit)や、収納施設としてのデータセンターに対するの飛躍的な需要拡大が見込まれているのだと思います。

生成AI市場については、人電子情報技術産業協会(JEITA)が、世界では2023年106億ドルから2030年に2,110億ドルへ、日本では2023年の1,188億円から2030年に1兆7774億円へと15倍への拡大を予測しています。また、データセンターについては国際エネルギー機関(IEA)が2026年の電力消費量が2022年の2.3倍になるという見通しを公表しており、日本でも同様の動きが生じると考えられます。

++

生成AIを活用して、これからどのような社会が形成されていくのか、全体像を把握するのはまだ難しそうですが、大きな社会システムの変革をもたらすことは間違いないと思われます。地域振興の面では、大都市圏だけでなく、地方の活性化にも資する動きとして期待したいと思っています。

 

 

*****

蛇足ですが、生成AIの普及・浸透の中でもうひとつ気になっているのは、単純労働だけでなく、専門職への影響も大きいということです。2023年にOpenAI社とペンシルベニア大学が共同で発表した論文「GPTs are GPTs」によれば、生成AIの導入によって、米国の8割以上の職業が少なくとも10%以上の影響を受け、しかも高収入の職種ほど大きな影響を受ける可能性があるそうです。プログラミングや文章作成は大きな影響を受ける一方で、科学的思考や批判的思考は影響を受けにくいという結果が示されています。

実際、コンサルタントの業界では、ChatGTPやGoogle BARDを使うことで、下調べの段階の手間は格段に省力されており、業界への入口となっていた調べるだけの業務の価値は明らかに減少しているように思います。他の職種でも似たような影響が起きているのではないかと思います。

ただ科学的思考や批判的思考は影響を受けにくいという結果に救いを感じます。社会的には生成AIの能力が上回るスキルギャップの谷を越えるためのシステムが求められると感じます。また生成AIがもたらす社会変化に飲み込まれてしまわないために、少しでも自らの価値を高めるべく、科学的思考や批判的思考が行えるように自己研鑽を怠らないようにしたいと思ってます。

 

株式会社マインズ・アイ 

代表取締役 名取雅彦

タイトルとURLをコピーしました