新しい時代の「まちなか再生」

 8月28日に中心市街地活性化評価・推進委員会の中間論点整理が公表されました。今回の検討は、2014(平成26)年に改正された中心市街地活性化に関する法律の附則において、2024年(令和6)年3月までに改正後の試行の状況について、県都を加え、必要な措置を講ずることとされていることを踏まえてのことだそうです。

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 論点整理にも記載されているように、中心市街地は一部を除いて停滞しており、中心市街地活性化制度を活用する自治体も減少しています。委員会では、こうした状況を踏まえて、「中心市街地」の役割が、これまでの「消費中心の場」から「生活を充実させる場」として捉え直すべき時代に来ているとの認識の下、新しい時代の「まちなか再生」 に向け、中心市街地の意義・役割を見直すとともに、現下の状況を踏まえた今後の取組の方向性について議論が行われています。

 中心市街地活性化法の制定は1998(平成10)年ですが、その後、2006(平成18)年の新まちづくり三法の制定から既に17年が経過しています。その後の状況を踏まえて、中心市街地活性化のあり方について、かなり突っ込んだ議論が行われているように思いました。

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 中間とりまとめで、特に面白いと思ったのは中心市街地活性化の枠組みについての記載。現在多くの自治体が。中心市街地活性化基本計画を策定せず、公の視点を中心とする都市再生整備計画や関連する立地適正化計画のみを作成していることについて、本来、これらの計画は両輪で動かすべきだが、それぞれの計画で重複する部分が多く、また、地方自治体では、 どちらの方がより助成金をもらえるのか、という観点から比較し、あえて中心市街地活性化基本計画を策定するメリットを感じていないことにあると記載されているところです。

 自治体が助成金の獲得という近視眼的な実利で動いているという指摘は、その通りであるし、大きな問題だと思いました。ただ、もう一歩踏み込んで欲しかったのは、現在の中心市街地活性法が、住民の消費機能のみを対策としている制度となっている点は、より明確に記載してほしかったところです。私自身は、2つの制度のデマケの問題以前に、対象領域が限定されていることが問題のように思っています。

 中心市街地の意義を、①地方創生、②地域経済の持続的発展、➂包摂性・多様性といった視点から再整理しているだけに、ここに切り込むために、産業活性化の視点が必要だという観点をより強く打ち出す必要があるように思いました。

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 もうひとつ興味深かかったのは、「まちなか再生」というワードがクローズアップされているところ。もともと、中心市街地vs.郊外地の構図で取り組まれていた状況を乗り越えて、中心部と郊外部がwin-winとなることをミスタワーディングのようです。

 この点についても、都市圏の中心という意味で、中心市街地と郊外部との対立を乗り越えることは大切だと思いますが、地域の稼ぐ力を強化するためには、基盤産業の立地を促進する等、都市圏を超えた求心力にも目を向けることが大切だと感じました。

 「まちなか」という用語が、「まちなか居住」等、これまでどちらかというと国土交通省の施策で用いられてきただけに、住宅・インフラ整備中心となり、産業活性化の視点が弱くならないかが懸念されるところです。今回の論点整理で、地域経済の持続可能な好循環の再構築という視点が意識されているだけに、「まちなかの再生」という表現が、単なる看板の架け替えに終わらないようにすることを期待したいと思います。

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 いずれにしても、今回は中間論点整理ということなので、今後の議論の展開と、新しい時代の「まちなか再生」の枠組みに関する議論の行方を引き続き注視したいと思っています。

 

マインズ・アイ 代表取締役 名取雅彦

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