カーボンフットプリントに思う

持続可能な社会の構築が喫緊の課題であることは言うまでもありません。2020年10月に、政府は2050年までに「温室効果ガスの排出量と森林などによる温室効果ガスの吸収量を均衡させ排出量を実質ゼロにする」にする、カーボンニュートラルを目指すことを宣言しました。

さらに最近では、化石燃料中心の経済・社会、産業構造をクリーンエネルギー中心に移行させ、経済社会システム全体の変革、すなわち、GX(グリーントランスフォーメーション)も重要政策課題として推進されています。

農業や食品分野でも、環境負荷のことを考える機会が増えました。食品ロス(フードロス、フードウェイスト)の削減が喫緊の課題ですが、最近は生産・流通を通じた温室効果ガスの削減に向けた取組も推進されています。

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こうした動きの中で、温室効果ガスの排出量をわかりやすく見える化する取組のひとつが「カーボンフットプリント」。世の中に提供されている商品やサービスについて、原材料の調達から生産、流通を経て最後に廃棄・リサイクルに至るまでのライフサイクル全体を通して排出される温室効果ガスの排出量をCO2に換算した指標です。2010年頃から、英国から取組が開始され、日本を含む世界各国で規格化の動きが広まり、2013年には「ISO/TS 14067」という国際的な規格も策定されました。

食品分野では、2022年4月に、デンマーク政府が、すべての食品ラベルにカーボンフットプリントの情報を表記する新しいラベリングシステムの導入について発表したことが話題となりました。同様の取組はEU全体としても導入を検討しているようです。

日本では、試行作業を行う中で指標の算出に手間がかかること、期待されたほど効果がないということが普及上の課題となっていましたが、こうした欧州における動き等も踏まえて、改めて取り組まれる可能性も大きいのではないかと思います。

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カーボンフットプリントは、商品やサービスに注目して、そのライフサイクル全体での温室効果ガスをみる取組ですが、最近では、サプライチェーンを構成する個々の事業者が、それぞれの段階における温室効果ガスの排出量の認証や、排出権取引に関心を持っているように思います。

既に、農業・食品分野でも、サプライチェーン内で温室効果ガスの排出を抑制させる仕組み(インセット型)、温室効果ガスの排出権取引を通じて排出量を減少させる取組(オフセット型)が輩出しています。

今後、関連主体それぞれの温室効果ガスについて、トレーサビリティのような考え方を取り入れることも考えられそうです。新しい社会システム構築の潮流になる可能性が高く、今後の動向に注目したいと思います。

株式会社マインズ・アイ代表取締役 名取雅彦

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