組織の存在目的に耳を傾ける

一昨年ベストセラーとなったフレデリックラルーの『ティール組織』は、厚くて読むのが大変ながら、考えさせられる記述が多々ある1冊。中でもはっとさせられたのは、「第6章 存在目的に耳を傾ける」です。

この章の冒頭は、グローバル企業GEの繁栄に貢献したジャックウェルチの往年の名著「勝利(Winning)」の紹介で始まります。生ける伝説とも呼べるようなビジネスリーダーの一人であり、この著作はわずか一語だが達成型組織のすべてを動かす原動力だと持ち上げます。

 

しかし、続けて、「こうしたビジネス書には明確に欠けているものがある。」「その会社の存在目的だ。「勝利」にはなぜ価値があるのだろう? そもそも、なぜこの組織は存在するのだろうか? 私たちの情熱を注ぎ、才能と創造性を発揮するだけの価値がそこにはるのだろうか?」と。

さらに、組織が定める「ミッション・ステートメントが空疎に響くには、自社の存在目的よりも「勝利」を重視しているからだ。ミッション・ステートメントは、本来、従業員に感動と指針を与えるものだ」と・・・

 

この問題提起に、はっとさせられました。

というのも最近のマネジメントでは、企業は資本家としての株主のために存在するものという考え方が当たり前で、従業員目線が新鮮だったからと思います。

実際、ミッションが大切だという経営者も管理者も、決算期ともなれば目標達成と利益の確保が最優先。評価も収益ベースの業績評価が当たり前になってしまっている中で、組織の存在目的を問い返す議論に、虚を突かれた思いがしたのです。

 

ただ、気になるのは競争の問題。特に公共機関の非効率性の原因は競争原理が働かないからと、民営化を大胆に推し進めた英国のサッチャーはもとより、わが国でも国鉄、電電公社の民営化もしかり。民活の議論の時は競争の必要性が強調され続けてきたからです。

実際、お手伝いすることの多い公の組織では独占形態に甘えてしまう構図が散見されます。例えば、シルバー人材センター。各自治体に一か所という原則があるため、競争という意識が極度に希薄なことに驚きを感じたことがあります。それで本来の目的が達成されればよいのですが、率直なところ、競争がないために、サービスの改善に対する緊張感が乏しいのかなと思ってしまいました。

この経験からすると「競争」の大切さも否定はできないと思うのです。

 

しかしラルーは、「いったい競争はどこに行ってしまったのか?」という問に対し、「答えは驚くほど簡単だ。組織が本当に自社の目的のために存在しているとき、競争は存在しないからだ。」と裁断します。

結局、大切なのは、明確な目的意識のもと、競争がなくても関係者がやる気と緊張感をもってあたれる状態。組織の「存在目的に耳を傾ける」ことは、そのための必要条件といえるのでしょう。

弊社のミッションはというと「Visionary Business Partner|見えない時代のビジネスパートナー」。ティール組織であり続けるために、これからも常に意識したいと思っています。

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