都市のスポンジ化

国土交通省の来年度予算を見ていて、「都市のスポンジ化」という表現が印象に残りました。 都市のスポンジ化とは、都市の内部で空き地や空き家がランダムに数多く発生し、多数の小さな穴を持つスポンジのように都市の密度が低下することをいいます。人口が減少する中で、市街地のまとまりが失われつつある状況を問題にする考え方のことです。

もともとは、饗庭伸首都大学東京教授が「都市をたたむ―人口減少時代をデザインする都市計画」(2015 年12 月・花伝社)で提唱した考え方ですが、国土交通省の社会資本整備審議会「都市計画基本問題小委員会」において議論が重ねられてきました。昨年8月に中間取りまとめが行われています。 確かに、住宅地でも街中でも空地、空き家が目立つようになっています。空地の発生は市街地としてのまとまり、効率性だけでなく、コミュニティのまとまりを弱める要因になる可能性が大きいと思われます。早期に適切な対処を行うべき課題といえるでしょう。

「都市計画基本問題小委員会」の中間とりまとめでは、そのための方策として、(1)現に発生したスポンジ化への対処方策「穴を埋める」、(2)スポンジ化の発生に備えた予防策「穴の発生を予防する」をあげています。今後、具体策を検討するとのことであり、どのように具体化されるのか注視していきたいと思います。

(1)現に発生したスポンジ化への対処方策「穴を埋める」:[1]土地等の媒介や所有と利用の分離を通じた空き地等の利活用 [2]土地・建物の利用放棄等への行政の関与・働きかけの手法の導入

(2)スポンジ化の発生に備えた予防策:「穴の発生を予防する」 [3]契約的手法の導入 [4]まちづくりを主体的に担うコミュニティ活動を推進する仕組みづくり

余談になりますが、「スポンジ化」という言葉で思い出すのは、1980年代半ばに英国で発見された狂牛病(牛海綿状脳症:BSE)です。牛の脳の中に空洞ができ、スポンジ(海綿)状になる病気です。日本でも2001年に千葉県で発生が報告されました。人への伝染も懸念され、世界的な問題となりました。 草食動物である牛に牛骨粉を混ぜた飼料が原因だったことや、脳がスポンジのようになるというイメージも人々の恐怖感を高めたように思います。86年には、土地政策の調査研究で暫くロンドンにしばらく滞在していたのですが、狂牛病が騒ぎになっていたので、牛肉を敬遠した覚えがあります。

その経験のせいか、都市のスポンジ化ときいて、狂牛病にかかった牛の脳をイメージしてしまいました。 都市のスポンジ化も、社会的には狂牛病と同じように恐ろしい病です。早期の対応を望みたいと思います。

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