“M-PESA”と“ShopUp”

 

世界のICT活用の取組をみていると、日本では難しいと思われているような仕組みが広く普及していて驚きを覚えることがあります。

例えば、ケニアにおけるケータイを用いた電子決済システムM-PESA。2007年にケニアの学生により開発され、Safaricomが始めた携帯電話を使用した決済サービスおよび送金サービスです。

アカウントを持つ送金者がM-Pesa取次店にお金を預け、携帯電話のSMSを利用してメッセージとして送金すると、送金を受けた側では Safaricom取次店でお金を受け取ることができます。出稼ぎ動労者の確実な送金手段として急速に利用者が拡大しました。

2010年からは南アフリカのボーダコムが参画、利用できる地域も拡大し、2020年末には4,000万人が使用しているといいます。アフリカの地方のような地方には銀行の支店やATMがあまりなく、信頼できる送金システムがない状況の中だからこそ、スマホではなくケータイのSMSを用いた送金インフラが急速に普及したわけで、逆に既成概念を超えたネットの可能性を感じました。

 

M-PESAによる送金の仕組み

       出所)総務省(https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h26/html/nc113100.html)

 

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最近、同じようにおもしろいと思ったのが、バングラデシュにおける“ShopUp”というe-commerceサイト。

どこがおもしろいのかというと、バングラデシュで95%を占めるというデジタル化とは無縁の小規模なパパママストアを支援するプラットフォームが100億円を超える資金を調達し、急速に成長しつつあるからです。

ShopUpの共同創業者兼CEOのAfeef Zaman(アフィエフ・ザマン)氏の生家もこうした小売店だったらしく、「450万の小規模小売店をバングラデシュの経済成長に貢献できるようにする」ことをミッションに据えて、在庫選択の目録がない、有効な配送手段がない、資金調達手段がないといった、小規模小売店が抱える問題を解決するためのBtoB型のシステム構築に取り組みました。

始めはフェースブックで商品を販売している店舗の支援からから始めたようですが、次第に提供サービスを拡充し、在庫を確保するための卸売市場、顧客へのラストマイル配送を含む物流サービス、運営資金など、多くのサービスを提供するフルスタックの企業間商取引プラットフォームを構築したのです。提供しているサービスは次の3つです。

  • Mokam:小売店が様々な商品を調達可能な卸売サービス。50万以上の近隣商店に対して、1万種類以上の商品を提供しています。これによって在庫を気にせずに商売を行えるようになったといいます。
  • REDX:バングラデシュ国内全域を対象とするエンド・ツー・エンドの物流サービス。ラストワンマイルの問題にも対応しているそうです。
  • Baki:ほとんど銀行から融資を得られない小売店に対して、25の指標を用いた独自の信用評価に基づき資金提供を行うサービス

この仕組みの特徴は、既存の個人商店を販売チャネルとして活かすことが可能なインフラを民間事業として構築した点にあると思います。大規模スーパーに席巻され、個人商店が絶滅しつつある日本では、なかなか考えられない仕組みですが、個性的な個人商店をプラットフォームが支える仕組みには、商店街の再生に向けて学ぶべき点があるように感じます。

Mokamのメニュー画面

REDXのログイン画面

出所)https://shopup.com.bd/

 

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我が国では岸田政権のもと、「デジタル田園都市国家構想」が注力されようとしており、来年度は地域づくりやまちづくりの分野でも“DX”がキーワードになりそうです。

DXにゼロベースの発想で臨むことが大切なことはいうまでもありませんが、本稿で紹介したM-PESAやShopUpのようなまったく異なった状況のもとで構築された仕組みをみていると、我々は既存の仕組みにどっぷりつかっている中で、仕組みを壊すような創造的破壊の視点を見失っているのではないかとも思ってしまいます。実際、来年度の予算案をみていると、表紙だけ変えたような施策もけっこう含まれているように思います。

デジタル化の可能性を活かすために、改めてゼロベースの視点をもって既存の仕組みを見直し、作り直す努力が必要なことを強調したいと思います。

 

 

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