高齢者の就業意欲は高いが・・

総務省が敬老の日を前に9月18日に発表した「統計からみた我が国の高齢者」によれば、2021年の65歳以上の就業者数は18年連続で増加しており、909万人と過去最多を更新したそうです。高齢者の就業率は25.1%で前年と同率ですが、65~69歳に限ると50.3%と初めて50%を超えたことがニュースで取り上げられました。

年金支給が開始される65歳以上の方の就労率が高まっていて5割を超えたということに、高齢者の就労意欲の高さを強く感じました。

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世界的にみても、我が国の高齢者の就業率はだいぶ高いようです。主要国との比較調査によれば、比較対象国のうちトップの韓国34.9%と比べればかなり低いものの、アメリカ18%、カナダ12.9%、イギリス10.3%。ドイツ7.4%等比べるとかなり高い水準となっています。さらに時系列でみると、日本の場合、2011年の19.1%から2021年には25.1%へと6ポイントも増加しています。

同調査の結果から、高齢者の就業率の増加は、世界的な潮流のようですが、日本の増加率は抜きんでています。日本は、世界的にみて高齢化が進んでいるだけでなく、高齢者が働く国に変化しているのです。

 

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一方、高齢就業者の従業上の地位はどうなっているかというと、役員を除く雇用者が517万人(高齢就業者の57.6%)、自営業主・家族従業者が270万人(同30.1%)、会社などの役員が111万人(同12.4%)となっています。さらに、役員を除く高齢雇用者の雇用形態をみると、非正規の職員・従業員が75.9%を占め、そのうちパート・アルバイトの割合が52.2%と最も高くなっています。高齢雇用者に占めるいわゆる非正規の職員・従業員の割合は75.9%に達しています。

非正規の職員・従業員が現在の雇用形態についた理由は、男女とも「自分の都合のよい時間に働きたいから」が3割以上を占めています。体力・気力も衰えるしそうだろうなと思ったのですが、一方で「正規の職員・従業員の仕事がないから」という回答が男性10.6%、女性6%を占めていることにも目が行ってしまいました。男女とも比較的多い「専門的な技能等をいかせるから」という回答も、非正規でしかそういう職場がないと読めるように思います。

これは私の身の回りの状況を踏まえた肌感覚ですが、実は高齢者の就業率が高まる一方で、きちんと正規職で働きたい高齢者に対する雇用機会が十分に提供されていないのではないかと思います。

 

 

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2022年の高齢者比率をみると、日本(29.1%)は、世界の人口10万人以上の200か国の中で最も高く、第2位イタリア(24.1%)を5%も上回っています。しかもこれからも高齢化が進行し、人口減少も見込まれています。

こうした中で、経済活力の維持を図るうえで、高齢者の高い就業意欲は我が国の見えざる資産といってよいと思います。ただ高齢者の非正規雇用が多い現実は、高齢者の能力を活かす取組の遅れを示しているようです。

多くのサラリーマンは、継続雇用で定年こそ延長する企業が増えたものの、処遇が大幅にダウンされている場合も多く、65歳になると最終定年を迎えます。会社から技能継承は期待されているようですが、都合のよいように使われるだけで、むしろ継続雇用の中で自らの能力を活かす機会を奪われている人もいるような気がしています。

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人口減少化と高齢化の中で、意欲ある高齢者が活躍できる社会の構築に向けて、高齢者はジブンゴトとして、他の世代の人は経済活力の維持に向けた社会システム上の課題として、高齢者の就業機会の拡充に取り組む必要があると感じます。

 

株式会社マインズ・アイ代表取締役 名取雅彦

 

(資料)総務省「統計からみた我が国の高齢者-「敬老の日」にちなんで-」(2022年9月18日)

 

 

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